「半年に1本イヤホンを壊す男」こと北山羊輔( @ysk_kitayama)です。
さて、イヤホンやヘッドホンの壊れ方として最も多いのが、
『ある日突然、片方だけ音が聞こえなくなる』という現象。
みなさんも、一度は経験されたことがあるのではないでしょうか。
「片方だけ聞こえなくなる」現象は、大抵の場合
のような「プラグ」部分内の断線が原因で引き起こされます。試しに、プラグの根元部分のコードを押し込んだり曲げたりしてみて、一時的に接触が直るようだったらほぼ間違いありません。
軽度の断線の場合には、ケーブルをテープで固定するなどの応急処置で直る場合もありますが、ほぼ間違いなく再発するので根本的に治すためには、本格的な修理が必要です。
さて今回は、このようなプラグ側で断線してしまったイヤホン・ヘッドホンを、自力で修理する方法についてご紹介します。
Contents
自力修理に必要なものと費用
はんだごてを使います
大事なことなので先に書いておきます。
こういった断線は、プラグの交換を行うだけで簡単に修理する事が可能なのですが、どうしてもはんだごてだけは必須になります。
はんだごてとは、機械を修理する時に使う、先っぽが熱くなって金属を溶かすアレです(雑)
今回行うようなプラグの交換は、そこまで難しくないはんだ作業に分類されると思いますが、当然の事ながら失敗のリスクもあります。
しかし、一度使い方を覚えておくと、あらゆる家電の修理に活用できるなど、色々と便利なので、興味と挑戦心のある方は、この機会にぜひチャレンジしてみてください。
必要なモノと費用
はんだごてを含め、今回紹介する修理方法の必要な材料・道具はすべてAmazonなどで購入することができます。
ホームセンターでも購入できるのですが、通販で揃えたほうが安くて高品質だと思います。
必ず必要な材料・道具は以上の2点。
最近のネット通販は恐ろしいもので、はんだごて、はんだ台、はんだ鉛、吸取り器、テスターなどあらゆるはんだ関連グッズが入ったセットがなんと3000円以下で購入できます。
執筆時(2017年12月11日)時点では
はんだごてセットが2999円、プラグが420円なので、トータルの経費は約3420円です。
はんだごての出費が必要なのは初回のみなので、2回目以降からはプラグの代金だけで修理が行えるという事になります。
また、本記事では使用しませんが、プラグを固定する手段がない場合には、固定台の使用をオススメします。
イヤホンプラグは小さく円筒状で固定が難しいため、これがあるだけで作業の効率性と確実性が格段に上がると思われます。こちらも安いものであれば900円程度で購入可能です。
自力で修理を行う前に
自力で修理をしようとする前に、必ず確認していただきたいことがあります。
メーカー保証の確認
まず、修理しようとしているイヤホンやヘッドホンに、
『メーカー保証が残っていないか』を必ず確認してください。
多くの場合、イヤホンやヘッドホンには1年間のメーカー保証期間が付与されています。保証書をしっかりと持っていれば、内部断線の場合、無料修理or新品交換などのサービスを受けられる可能性が高いため、この保証を活用しない理由はありません。高価な商品ならばなおさらですね。
保証期間が分からない場合は、まずメーカーや購入店舗にお問い合わせください。
有料修理サービスと比較してみる
メーカー保証がない場合でも、メーカーや専門業者に有料で修理を依頼する事もできます。
メーカーさんに修理を依頼すれば、高品質で確実に直してもらえますが、メーカーさんによっては万近い費用を請求してくる場合がありますので、あまりオススメはできません。
修理を依頼するのであれば、専門店が安くて確実でしょう。
個人的なオススメは『e-イヤホンの修理サービス』
こちらを利用すれば、安ければ4000~5000円程度で修理が可能です。
大阪や東京近辺にお住まいの方は、直接店舗に持ち込むことで、さらに安く修理していただける事でしょう。
自力での修理に比べると、若干コストはかかりますが、確実性もありオススメです。
自力修理のメリットとリスク
・業者さんの有料修理サービスよりも安い価格で修理ができる。
・一度道具を揃えれば、今後はプラグ代だけで修理ができる
・オーディオケーブルの基本的な仕組みを知ることができる。
・楽しい(個人差があります)
ただし、ここまでお読みいただければ分かるように、
自力での修理というのは手放しでオススメできるものではありません。
リスクや手間を考えれば、有償修理に出すか、新しく買い替えたが良い場合も多くあります。
修理には失敗のリスクもあり、本記事で紹介する修理方法が全ての製品に適応できる補償はありません。
ですので、買い替えか、業者修理か、自力修理かをご自身でゆっくり検討し、
自力修理のリスクを踏まえた上で、それでも自力でやってみたいという方は、ぜひ挑戦してみてください。
・イヤホンを少しでも安く修理したい人
・既にはんだごてを持っている人 or はんだごてを使えるようになってみたい人
・通勤などでイヤホンをハードに使う人・よく断線させちゃう人
・修理に失敗しても泣かない強い心を持った人
修理工程
それでは、実際の修理の工程を時系列で解説していきます。
今回は先ほど紹介した、AnbesのはんだごてセットとNEUTRIKのプラグを使用しています。
1. 断線したプラグの切断
まず、根本が断線してしまっているプラグを切断します。
ニッパーや切れ味の鋭いハサミなどで、好きな位置を思いっきりスパッと切断しちゃってください。
躊躇すると内部のラインや緩衝材を切りそこねるので、思い切ってどうぞ。
北山 羊輔
2. 導線をむきだす
Anbesのはんだごてセットをお使いの場合は、セットに同梱されている黄色のプラグカッターを使って、導線を露出させていきます。
通常のカッターや、ハサミ・ニッパーなどでも可能です。中の導線を切らないように気をつけてくださいね。
写真ではカッコつけて1.5cmほどしか露出させていませんが、初心者の方はこの倍の3cmくらい露出させる事をおすすめします。
露出させた線は何本かの線が結束した状態になっているので、指で軽くこねて解いてあげましょう。
多くの場合、内部には緑or青・赤・ブロンズの3本の導線という構成になっているかと思います。
一般的に赤い線が右側の音を、緑or青の線が左側の音を伝える線として機能している場合が多いとされています。
ブロンズの銅線はGNDといい、他にもグランド、シールド、アースなど色々な呼ばれ方をする線で、簡単に言えば『左右どちらにとっても大事な線』です(雑その2)
イヤホンによっては、このGNDが2本ある場合がありますが、その場合は2本のGNDを指でこねて1本にしてあげてください。
3. プラグの開封
事前に購入しておいたプラグを開封をしましょう。
NEUTRIKのプラグの場合、①プラグ本体、②プラグカバー(メタル)、③チューブカバーの3点が同封されているかと思います。
4. プラグカバーをコードに通す
事前に、②メタルカバーと、③チューブカバーの順番でケーブルに通しておきます。
これを忘れると、後で非常に悲しいことになりますので忘れずに行いましょう。
北山 羊輔
5. はんだごてを準備する
さぁ、いよいよはんだ作業に入っていきます。
はんだごてを、はんだ台にセットし、スポンジに水を軽く含ませておきましょう。
Anbesのはんだごてセットに付属しているはんだはケースに入れたまま使えるタイプなので、すぐに使えるようにニョロっと出しておきましょう。
付属のはんだは、スズ60%・鉛40%という一般的な配合ですので、はんだごての設定温度も一般的な350℃前後で問題ないと思います。
セラミックヒーターなので、完全に温度が上がりきるまで3分程度かかります。
はんだごて台にセットしたまま上昇するのを待ちましょう。
6. はんだ付け前の確認
はんだ付けに入る前に、最も重要な点について確認しましょう。
今回使用するNYS231というプラグの場合は、プラグから伸びた長い突起にR線(右側の音)、短い突起にL線(左側の音)、下の大きな突起にGNDを繋ぐ必要があります。
赤は右というオーディオ機器の大原則に従って、赤い導線は長い突起(R)に、緑or青の導線は短い突起(L)に繋ぐという認識で問題ないと思います。
ただし、古い型やメーカーによってはこの法則が通用しない場合もあると聞きますので、念のために一度突起に線を巻きつけるなどした状態でプラグをオーディオ機器に接続し、実際にイヤホンを聞いてみて左右が正しいかを事前に確認すると良いでしょう。
はじめてはんだごてを扱う方へ
※この項目は、はんだごてを使い慣れた方は飛ばしてください。
はんだごては、使い方を誤ると火傷を負ってしまう場合もありますので、初心者の方は必ず事前にはんだごての使い方を予習してください。
おすすめはワールド電機工業 小畑さんのはんだづけ講座動画。
はんだごての持ち方から、はんだの供給の仕方まで丁寧に説明されていますので、ぜひご参照ください。
7. いざはんだ付け
今回使用している付属のはんだはRoHS指令という決まりに準拠したものですし、そもそも趣味程度の吸引では健康に影響を及ぼすとは考えにくいのですが、念のため換気は徹底してくださいね。
さぁ、それではいよいよ、はんだ付け作業を始めます。
行う作業の流れは、この動画(01:46~)が非常に参考になります。
音声解説は英語ですが、画だけでも十分に要領がつかめるかと思います。
ポイントは『予備はんだ』
さて、今回のような接点が小さいはんだ作業において最も重要なのが『予備はんだ』です。
動画でいうと01:46 ~ 03:00に行っている作業ですね。
ちょっと文章で説明するのが難しいのですが、
予備はんだというのは、事前に、はんだで繋げたいもの同士にはんだを少し溶かしておく作業で、これを行うことではんだ付けが格段に容易になります。
例えば、接着剤で何かを接着する時って、接着するもの同士両方に、あらかじめ接着剤を塗っておきますよね。それと同じ事です。
はんだと金具が同じ銀色なので、分かりにくくて申し訳ないのですが、要はこのように、接着する予定の位置にちょこんとはんだを乗せてあげるだけです。
横から見た際に『富士山のシエルエット』のようになると素敵です。僕がやるといつもキスチョコレートみたいになります。
同じようにして金具の残り2箇所と、導線3本の先端にも予備はんだを付けてあげてください。
導線側の予備はんだは少し難しいのですが、動画の02:42~あたりを参考にすればうまくいくと思います。コテを下から当てるのがポイントです。
予備ハンダがしっかりと付いていれば、あとの作業は簡単です。
はんだの付いた導線と金具をくっつけた状態で『こて』をさっと当ててください。
これだけで一瞬ではんだ付けが完了します。
導線をかるく引っ張ってみて、外れなければ問題ありません。
僕は心配性なので、最後に上から少しだけはんだを追加して補強しています。乗せすぎるとカバーに入らなくなったり干渉の恐れもあるので、ちょっぴりです。
8. カバーを取り付ける
はんだが固まり、プラグが熱を持っていないことが確認できればカバーを付けていきます。
まず、プラグ下部のこの部分を、ペンチなどを使って内側に丸めて下さい。
次に、事前にコードに通しておいたチューブカバーを、接合部を覆うようにして取り付けます。
このチューブ熱圧縮でもなんでもないただのカバーなので、炙ったりしないように注意してください。(一度試しに炙ってみてひどい目に遭いました)
最後に、メタルカバーをくるくると回し装着すれば完成です。
9. 実際に接続してテストする
さぁ、いよいよドキドキのテストタイムです。
実際にスマホやオーディオ機器などに接続してみて、治っているか確認してみましょう。
しっかりとイヤホンの両側からノイズのない音が出ていれば、これで修理作業は終了です。お疲れ様でした。
もしも、はんだ付けが甘くてうまく接続できていなかったとしても、セット付属の吸い取り機を使えば、何度もやり直し可能ですので改めてトライしてみてください。
より強度を増したい方は、配線周りをグルーガンで固定したり、熱圧縮チューブを取り付けるなどして工夫すると良いでしょう。
今回使用したプラグ『NYS231G』は、サイズが大きめプラグであるため、イヤホンの細いラインに搭載するとちょっぴりアンバランスですね。耐久性や防水性が気になる方は、テープや圧縮チューブて補修されると良いでしょう。
『NYS231G』は金メッキ加工の作りがしっかりとしたプラグであり、デフォルトのゴム製アダプタと比べても高級感があるように思います。
音質に関しても問題が生じた事はほとんどありませんし、修理後に再度故障したこともほぼありません。そのような実績のあるアダプタなので、個人的に信頼しています。
しくみを知ることの大切さ
と、いうことで今回は断線したイヤホンを自力で直す方法についてご紹介しました。
初めてこういった修理をされた方にとっては、少し難しかったかもしれませんが、なかなか楽しめたのではないでしょうか。
コスト的な面はもちろんですが、なによりも普段私たちの生活に密接に関わっているイヤホン類の仕組みをよく理解できる事が、自力修理の最大のメリットです。
こういった『物事の実際的なしくみを知る』事は至高の経験であり教養であると、個人的には思っています。
今後もこういった家電修理系の記事は時々書いていきたいと思います。
長々とお読みいただき、ありがとうございました。